親がそろそろ70代…でも「相続の話」ってなかなか切り出せないですよね。縁起でもないし、お金の話だし。でも実は、相続で家族が揉めるケースの多くは「準備不足」が原因です。難しく考えなくて大丈夫。順番さえ知れば、誰でもできます。FP2級を持つ筆者が、今日から使える相続対策の基本を解説します。


「相続対策」って何をすること?まず言葉の整理から

「相続対策」と聞くと、なんとなく「お金持ちの人がやること」というイメージを持っていませんか?実はそれ、大きな誤解です。相続対策とは、「亡くなった後に残された家族が困らないよう、生きているうちに準備をしておくこと」です。財産が多い少ないに関わらず、家族がいる人なら誰にとっても必要な話です。

相続と相続税は別の話

まず大事な前提として、「相続」と「相続税」は別の問題です。

相続とは、亡くなった人(被相続人)の財産や負債を、残された家族(相続人)が引き継ぐこと。これはすべての人に関係します。

相続税とは、引き継いだ財産が一定額を超えた場合にかかる税金のこと。「基礎控除」という非課税枠があり、「3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)」以下であれば、相続税はかかりません。たとえば相続人が配偶者と子ども2人の計3人なら、控除額は4,800万円。実は日本の相続案件のうち、相続税が発生するのは全体の約9%にすぎません。

つまり、相続対策=相続税対策、ではないのです。

対策が必要な人・そうでもない人

相続税の心配がほとんどない方でも、「誰が何を相続するか」「不動産をどう分けるか」「預金口座の名義変更は誰がやるか」といった問題は全員に降りかかります。一方で、財産が基礎控除を大きく超える場合は、税対策も含めた本格的なプランニングが必要です。まずは「うちの財産、だいたいいくらくらいだろう?」と把握するところから始めましょう。


相続対策を後回しにすると何が起きる?

「まだ親も元気だし」「うちは揉めるような財産なんてない」——そう思っていても、実際に相続が発生した瞬間、想像以上に大変な現実が待っています。

家族が揉める「争族」のリアル

相続トラブルは、実は「億単位の財産がある家」より「数千万円台の財産がある普通の家庭」で多く起きています。家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割の調停・審判のうち、相続財産が5,000万円以下のケースが全体の約75%を占めるという統計があります(司法統計年報より)。

なぜか? 財産が少ないほど「一円でも多く欲しい」という心理が働きやすく、しかも「遺言書がない」「故人の意思が不明」という状況になりがちだからです。準備がないまま相続が発生すると、長年仲の良かった兄弟が、財産の分け方ひとつで何年も法廷で争う「争族」になるケースも珍しくありません。

手続きだけで数ヶ月かかる現実

感情的な揉め事がなかったとしても、相続手続きには想像以上の時間と手間がかかります。戸籍の収集、金融機関への届け出、不動産の名義変更(相続登記)、場合によっては相続放棄の申述…。これらの手続きを、悲しみの中でこなさなければなりません。

さらに、相続税の申告期限は「死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内」と決まっています。準備なしで迎えると、この期限に間に合わず延滞税が発生することも。「何となく後回し」では済まされない事態になりえるのです。


相続対策の5つのステップ

では、具体的に何をすればよいのか。難しく考えず、以下の5つのステップを順番に進めてみてください。

ステップ1|財産と負債を「見える化」する

まず最初にやることは、「財産と負債の棚卸し」です。

プラスの財産:預貯金・株式・投資信託・不動産・生命保険の死亡保険金・車・貴金属など

マイナスの財産(負債):住宅ローン・借入金・保証債務など

これを一覧にまとめるだけで、全体像が見えてきます。「エンディングノート」を活用すると書きやすくおすすめです。エンディングノートとは、自分の財産情報や希望を書き留めておくノートのこと。法的な効力はありませんが、残された家族が把握するための「道しるべ」になります。

ステップ2|法定相続人と法定相続分を確認する

「誰が相続人になるか」は、民法で決まっています。これを「法定相続人」と言います。

基本的な順番は:

  • 配偶者(常に相続人)
  • 第1順位:子ども(子どもがいなければ孫)
  • 第2順位:父母・祖父母(直系尊属)
  • 第3順位:兄弟姉妹

また、各相続人が受け取る割合の目安を「法定相続分」と言います。たとえば配偶者と子ども2人がいる場合、配偶者が1/2、子どもが残りの1/2を均等に分けるのが基本です。

ステップ3|遺言書の有無を検討する

特に以下のようなケースでは、遺言書の作成を強くおすすめします。

  • 子どもが複数いて、財産分割でもめそうな予感がある
  • 再婚していて、前の婚姻の子どもがいる
  • 特定の人に財産を渡したい
  • 不動産を特定の人に継がせたい

遺言書には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があります。自筆証書遺言は手軽ですが形式ミスで無効になるリスクも。公正証書遺言は費用がかかりますが確実性が高いです。

ステップ4|生前贈与・非課税制度を活用する

生前贈与とは、生きているうちに財産を渡しておくこと。暦年贈与(毎年110万円まで非課税)が代表的ですが、2024年の税制改正により、相続前7年以内の贈与は相続財産に加算されるルールに変わりました。計画的に行うことが重要です。

また、生命保険の活用も有効です。死亡保険金には「500万円 × 法定相続人の数」という非課税枠があります。たとえば相続人が3人いれば、1,500万円まで相続税がかかりません。

ステップ5|専門家に相談するタイミングを知る

以下のタイミングで一度相談することをおすすめします。

  • 財産の棚卸しをしたあと、全体像が見えてきたとき
  • 親が70代になり、健康状態に変化が出てきたとき
  • 親子間で「そろそろ話したほうがいいかも」と感じたとき

よくある相続対策の「落とし穴」

生前贈与のやりすぎ・早まり

2024年以降、相続前7年以内の贈与は相続財産に加算されるため、「何年も前から少しずつ贈与してきたのに、結局相続財産に含まれてしまった」というケースが今後増える可能性があります。また、通帳や印鑑を親が管理したまま子ども名義の口座に貯めていると、「名義預金」として相続財産に含まれてしまうことがあります。

不動産の相続は特に慎重に

不動産は節税効果があると言われますが、「分割しにくい」という大きな問題があります。一軒の実家を兄弟3人で相続する場合、売却か賃貸か、誰かが住み続けるかで意見が割れることが多い。最終的に共有名義にすると、売却の際に全員の同意が必要になり、後々のトラブルの火種になります。


「うちはまだ早い」は危険なサイン

相続対策に「早すぎる」はない

認知症になってしまうと、遺言書の作成も生前贈与も法的に難しくなります。厚生労働省の調査によれば、65歳以上の約7人に1人が認知症とされています。「まだ大丈夫」と思っていた親が、突然判断能力を失うリスクは決して低くありません。

まず親子で「話す」ことから始める

「老後はどうしたいか」「財産はどう分けたいか」——こういった話題は切り出しにくいものですが、「FPの話を聞いてきたんだけどさ」「エンディングノートって知ってる?」など、話のきっかけは作れます。


まとめ:まず「今日できること」から始めよう

財産の見える化→相続人の確認→遺言書の検討→生前贈与の活用→専門家への相談、この5つのステップを順番に進めるだけで、家族を守る準備は確実に前に進みます。

「何から始めるかわからない」という方は、まずFPへの無料相談がおすすめです。家族が笑顔で相続を迎えられるよう、今日の一歩を一緒に踏み出しましょう。

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